おはなすび の オススメ

〜 本・マンガ紹介 〜

興味を持って欲しかったら

 

f:id:ohanasubi64:20220414023409j:plain

【二日月・山岸涼子

いきなりだが、どうゆう時、人は人に興味を持つだろうか?

 

なんだか独特な雰囲気だなーとか、顔がタイプだなーとか、なんか考え方が似てそうだなーとか。

それはもう、きっと人がいれば人の数だけあるけども。

たぶん多くの人は「自分に興味をもってくれる人」は、やっぱりどこかで気になっちゃうものなんじゃないだろうか。

 

それがたとえば損得を含むものだったりすると、何処かでうーん・・・となってしまうかもだが

色んなもの取っ払って「ただ人間として興味がある」みたいなものが、もしも相手の根っこにあるとしたら

人は人を、なかなか嫌いになれないような気がする。

 

山岸涼子さんの【二日月(ふつかづき)の朱雀門すざくもん)】という作品の中で

 

うわー、やばい。

これは人間の真理だ・・・と思ったシーンがある。

 

 

******

 

主人公はイラストレーターをしているアラサー独身女性。

 

あまりにも絵を描くのが好きすぎて、仕事に熱中するがあまり、結婚というものをあまり意識してこないまま32歳を迎える。

 

ある日、不安に思った親戚が「そろそろ、お見合いでもどうかね?」と縁談を持ってきた。

 

あーだるいなーと思いつつも、彼女も心のどこかで焦ってはいたため、その日からありとあらゆる人とのお見合いを重ねた。

 

だが、ほとんどの縁を自分の方から「ごめんなさい」と断ってしまう。

 

違う。なんか違う。

 

良い人なんだけど何かが違う・・・。この人もダメ、あの人もダメ。

 

ダメ。ダメ。ダメ。違う。違う。違う。。。

 

そんな中、一人だけ良いなと思う男性にようやく出会った。

 

彼は自分と同じように星の研究に没頭する人で、その好きなことに熱中する姿は、どこか自分と重なるところがあり彼女は好感を持った。

 

「あ、この人となら私も今ままで通り、大好きなイラストを描きながら一緒に生きていけるかも。」

 

ようやくそう思えた。

 

・・・が、ある日。

 

彼とのデートで、鍋料理のお店にいったところ、運ばれてきた野菜や肉をどうやって入れたらいいか、彼女はあたふたしてしまう。

 

「私、家だと普段ほとんど料理をしないんですよ。あれ・・・肉だっけ?野菜だっけ?何から先に入れるんだっけ・・・」

 

その瞬間、彼はあからさまに彼女への興味を失った表情を浮かべた。

 

その日の帰り道。

 

駅で「じゃ、また」と去って行く彼の後ろ姿には、ハッキリと彼女への拒絶が浮かんでいたという。

 

f:id:ohanasubi64:20220404181959j:plain

 

 

・・・ハッ (゚Д゚)

 

その瞬間、彼女が感じた描写が実に面白い。

 

【二日月の朱雀門すざくもん)より引用】

 

うん、だからそれなのよ。なんと私と彼そっくりだった。

 

二人ともある一つのことで一生懸命で、他を顧みるゆとりがなかったのよ。

 

二人ともすごく好きなことだけをやってきた人間なのよね。

 

ものすごく好きなことがあるということは、すごく嫌いなこともあるということなのよ。

 

嫌いなことというのは許せないことと同じなのよ。

 

平凡じゃない人を望んで彼を見た時、私はすごく自分が見えたわ。

 

つまり彼には包容力や許容力がないのよ。

 

それは、私が今までお断りしたお見合いの相手に示した態度と同じだったのよ。

 

些細なことが許せなくてその人たちを拒否してきたのよ。私も。

 

なんと私は、自分が100パーセント許されることを期待しながら、相手を1パーセントも許さない人間だったのよ。

 

そうゆう人間が人を愛せると思う?

お見合いなんか何度やっても同じよ・・・。

 

うっわ・・・。

 

私はそのシーンを見て、自分も彼女と似たところがあるという痛さで、胃がギュンっなったのと同時に

 

5年くらい前のバイト先での出来事を思い出していた。

 

f:id:ohanasubi64:20220404182704j:plain

 

「なんでこの子、こんなに居心地いいんだろう?」

 

それは少し変わった魅力の持ち主だった。

5年前。当時まだ私も25歳だった頃。

 

その当時バイト先にいた、私より4つ年下のその男の子は、別に仕事ができるわけでもなく、かといって特別愛想が良いわけでもなかったのに何故だかみんなに愛された。

 

あれやこれやと細かくうるさいで有名な昼間のおばちゃんですら「私なんかあの子好きなのよね」と、よく影で私に漏らしたものだった。

 

何でだろう?

何でかわからないけど、人を安心させるなにかがある。

 

その子がミスしちゃっても「あ、大丈夫だよーあとやっとくよ。」とすぐ声をかけたくなるし

面倒臭そうにサボってる姿を見かけても、なぜだか嫌な気持ちがいっさい湧いてこなかった。

 

その理由が・・・なんだか少しだけわかった気がした。

 

何と言うか、彼には人を裁く心がなかったのだ。

 

あぁだから、この人はダメ。

こうだから、あの人もダメ。

 

そうゆうものがいっさいなく

今、自分の目の前にいる人に対して、過剰にいい人を演出するわけでもなく、ただ普通に相手に興味をもって接する。

 

んでもって自分の出来なさとか汚さを変に隠したりもしなかった。

 

人間なんてみんな間違ってるし、みんな合ってるよね、みたいな。

あなたもダメだけど、俺もダメ。だいたい皆んな、ダメだよね、みたいな。

 

あの感じ・・・心地よかったなぁ~。

ひさしぶりに思い出したな。元気にしてるかな。してるといいな。