はなお の オススメ

〜 本・マンガ紹介 〜

人生こんなものだったのか・・・と虚しさを感じている人へ

 

【今日の芸術・岡本太郎

 

いきなりだが、心の底から命そのものが輝くような充実感みたいなものを感じたのは、一体いつが最後だろうか?

 

人間、学生時代が終わるとそのほとんどは社会にでて、バイトなり仕事なり給料に差こそあれ

きっと子どもの頃よりは、欲しい物や、やりたいことにお金を使えるようになったはずだ。

 

でも・・・なぜだろう。

どこか「人生ってこんなもんだったのか?これ以上はもう何もないのか?」と虚しくなってしまうことって、ないだろうか。

 

このままずっと、これからも同じような毎日が繰り返されて、なんかこう。。。

あとはただ・・・歳をとっていくだけなのか?

 

そんな思いがふと頭をよぎると、急に全てのことがどうでも良くなって

どこに行って、誰と会って、何をしていても、なぜだかずっと虚しい気持ちが心のどこかに漂う。

 

そんな人に、是非とも読んでほしい本がある。【今日の芸術・岡本太郎

 

 

これは芸術家になりたい人だけに、向けられた本ではない。

 

この世に存在する全ての生きていることの虚しさに気づいてしまった人たちに捧ぐ、精神的エナジードリンクとなる一冊だ。

 

 

これが発売された当時、いまを代表する多くの芸術家たちが、その内容に思いっきしぶん殴られ「わりぃ。俺、芸術家になるわ。じゃ!」と、その世界に飛び込んでいったという。

 

私自身、もともと岡本太郎の熱狂的ファンというわけでもないのだが、この本だけは間違いなく名作だと思っている。

 

彼は言う。

〝芸術は、ちょうど毎日の食べものと同じように、人間の生命にとって欠くことのできない、絶対的な必要物、むしろ生きることそのものだと思います。〟

 

つまり何かを食べたり、寝たり、性的なことをしたり・・・といった人間の三大欲求と同じくらい

「何かを創る」と言うことは本来、人間にとって欠かせないものであり、みんながみんな当たり前に欲しているものなんだ、と。

 

うーーーーーん・・・?

 

そんなこと言われても、物作りが生活に馴染んでいない人にとっては、あまりピンとこないかもしれない。

何も創らなくたって人は生きていけるし、誰かの言葉や体温に満たしてもらえることだって充分にある。

 

・・・でも、きっと。みんな本当はわかっている。

この虚しさの正体は「自分だからこそ生み出せる何か」を生み出していないことから湧き出てくるのだ。

 

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(今日の芸術・岡本太/知恵の森文庫より引用)

 

ふつうの人は「生活」というと、働いてその日その日を何とか食い繋ぎ

 

余暇には適当な娯楽、と言っても映画やプロ野球を見たり、あるいはハイキングや温泉旅行というようなレクリエーションをするくらい。

 

そして翌日からは、また精を出して食うために働く。

それが当たり前だし、人間なみの生活だというふうに考えています。

 

なるほど人は、社会的生産のために、いろいろな形で毎日働き、何かを作っています。

 

しかし本当に創っているという、充実した喜びがあるでしょうか。

正直なところただ働くために働かされているという気持ちではないでしょうか。

大抵の人は食うためだと割り切って平気でいるように見えます。しかし自己疎外の毒は意外に深く、ひろく、人間をむしばんでいるのです。

(省略)

では、現代人の生きがいのようになっている余暇の楽しみ。趣味的な部分について考えてみましょう。

 

われわれの生活をふり返ってみても遊ぶのには、全くこと欠きません。

そしてそうゆう手段、施設はふえる一方です。

だが、ふえれば ふえるほど、逆にますます遊ぶ人たちの気分は虚しくなってくるという奇妙な事実があります。

 

遊ぶにしても、楽しむにしても、本当に楽しく、生命が輝いたという全身的な充実感。

生きがいの手応えがなければ、本当の意味のレクリエーションにはなりません。

 

たとえばプロ野球を見に行く。結構な楽しみです。

いいチャンスに、ホームランが出る、また素晴らしいファイン・プレー。

皆んな大喜びです。胸がすーっとします。

 

だが、それがあなたの生きがいでしょうか?

 

あなたの本質とは全く関わりのない。

そのホームランのために、自分の指一つ動かした訳じゃないし、スタンドでの感激はあっても、やはりただの見物人であるに過ぎないのです。

 

人がやったこと。あなたはそこに参加していない。

結局自分は「不在」になってしまう。

 

その虚しさは自分では気づいていなくとも、カスのようにあなたの心のそこにたまっていきます。

楽しむつもりでいて楽しみながら、逆にあなたは傷つけられている。

いいようのない虚しさに。

 

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ここで終わると、死にたくなりますよね。笑

 

おおおおあああああ!!!!と雄叫びをあげて

そのまま素手で本を破り捨て、太ももがチギれるまでダッシュしたい気分にかられます。笑

 

ただ、この本のすごいところは「わかってるよ、わかってる。そこまで気づくことはできても、そこからどうやって抜け出して良いかがわからないんだよな?」

 

「じゃぁ、今からそれをお話しようじゃないか。」という所から、スタートするところにある。

ものすごい期待値じゃないだろうか。

 

〝自分自身に充実する。電気冷蔵庫を置いたり、自家用車を持って生活が楽になる。

そんないわば、外からの条件ばかりが自分を豊かにするのではありません。

他の条件によって引き回されるのではなく、自分自身の生き方、その力をつかむことです。

それは自分が作り出すことであり、言い換えれば自分自身を創ることだと言ってもいいのです。〟(今日の芸術より引用)

 

これは形式的なそこら辺の自己啓発本じゃない。

一人の男が人生をかけて、突き詰めた自分自身として生きるということ。

生み出すということの本質について書かれたものである。

 

それが絵なのか、料理なのか、文章なのか。

あるいは、ただそこに「居る」といった存在そのものでもう充分なのか。

 

少なくとも、一文字、一文字をしっかり味わうように読んだのなら、読了後、以前と全く同じような虚無感に包まれることはもうないだろう。