【還暦のシンデレラガール・どんぐり〔竹原芳子〕】
「好きなことで生きていく」
これは、今から8年前。
初めてYouTuberというものを、CMで取り上げた時のキャッチフレーズだ。
これが、テレビで流れ出した当時は「そんなこと本当にできるの?」とか「胡散臭いものテレビで流すなよ。」
といったような、ネガティブな空気の方がよっぽど強かったが、今ではもう違う。
本当に、やり方次第で、年齢・性別・関係なく「好きなことで生きていく」ができるようになってしまった。
でも、じゃあ、なぜ・・・
みんなそうしないのか?
それは「好きなこと」がないからだ。
何がどうなったとしても絶対に成し遂げたい「やりたいこと」がないから。
ちょっと悲しいけど・・・それが普通だ(´・ω・`)
でも、ないならないで、どうして「じゃ、探すかー!」と、ならないのだろうか?
そこが大人という生き物の、最大の謎である。
人は間違える。
「これがやりたい」と思ってやってみたら「何か違った」なんてことは、当たり前にあることだし、だからといって落ち込む必要は全くない。
それよりも「違った」ことが「わかった」ということ。
本当はそれをきっかけに「どこの部分がどう違ったのか」を体で知って、また次やってみれば良いだけのこと。
その繰り返しこそが、自分という人間を、一番自然な方へと導いて行ってくれる。
“どんなチャレンジも止めなくていいし、ずっとずっと迷ったって良い。”
“岩をも通す一念であれ、消去法で選んだことであれ、その人にとって一番いい道は、必ず自分で見つけられるはず”
そう語るのは「カメラを止めるな」で、いちやく有名になった、女優のどんぐりさんだ。
58歳。
迷い続けて、いろいろやって、ようやく辿り着いた女優という職業。
【還暦のシンデレラガール】は、そんな、どんぐりこと竹原芳子(たけはらよしこ)さんの、リアルな人生物語がつづられている。
アラカンでも、人生まだまだわからない。
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“ アラカン。独身。職業は「やりたいことを模索中」ドラマの設定なら「イタイおばちゃん」ってとこでしょうか? ”( p7より引用)
33歳。
20代からずっとやっていた、証券会社の営業を辞めました。
その頃にはもう主任になっていたし、職場の人間関係も、お客様との関係もうまく行っていたけれど
どうしても今の仕事を「定年まで続けよう・・・とは思えなかった」のです。
とはいえ、辞めてはみたものの、そんなすぐには特別な夢は見つからないし、やりたい仕事もわかりません。
なのでとりあえず人材派遣会社に登録し、色んな仕事を「お試し」でやってみることにしました。
全て短期契約。
そして、仕事の合間にはあらゆる習い事もたくさんしてみました。
話かた教室、エレクトーン、水彩画、カメラ、乗馬、、、。
あそうそう、社交ダンスは1日で辞めました。
なぜなら勇気を出してみんなの前でステップを踏んだら「みなさん見ましたか?今のは悪い見本です」と見せしめを食らったからです。
・・まぁ、どっちにしてもどれも長くは続かなかった。
「これや!」と思って始めたフラワーアレンジメント講座も
「どうしてもアレンジメント講師になりたいんです!」と、受付で意気込んだところ
「はいはい、まずは落ち着いてくださいね」となだめられ
実際やってみたら、自分でも「あれ?なんか思ってたのと違うな・・・」と、ひょうし抜けするくらい、すぐに辞めてしまったのです。
“ 手に職をつける ”それができたら人生変わると思ってました。
でも、何を?
私にはいったい何が、向いているのだろう・・・?
そう思いながら、ずっと探してきました。
でもそう簡単には、見つからなかったのです。
こうゆう話をすると、よくインタビューなんかで
「本当にたくさんの挫折を経験されてきたんですね。」と、言われたりしますが
「挫折・・・?はて。」
そもそも挫折という言葉をあまり使ってこなかったので、何だかピンときません。
そうだ、辞書で調べてみましょう。
“心が折れてくじけること・・・?”
いやいや私は、心は折れてませんっ!笑
「手に職をつけなくては」という一心で、あれこれ試してはみましたが
それは「それではなかった」という経験がいくつも積み上がっただけ。
本人が挫折ではなかったというのだから、それは「この道ではない」という標識に過ぎなかったというだけのことです。
【還暦のシンデレラガールより引用】
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そう。
好きなことや、やりたいことなんていうのは、そう簡単には見つからないのが当たり前なのだ。
しかも、それを見つけても、同時に「自分に合ったやり方」も探らないと、具体的には実現できなかったりもする。
それにはものすごく時間がかかるし、その渦中では当たり前のように、気分が落ち込むような言葉を投げかけてくる者もあらわれる。
この本にも出てくるが「あなたのためのアドバイス」は聞いたそばから忘れて良い。
「もう良い年なんだし、そろそろ就職も考えたら?」も
「そろそろ結婚とかどうなの・・・?」も
全部全部、忘れていい。
だって本当に「あなたのため」を思ってくれている人というのは、そんな雑なアドバイスなんてしないから。
少なくともこっちの内部に対して、最低限の敬意をもって丁寧に関わろうとしてくれる。
その気配がもしも感じられないのならば、おそらくその「あなたのため」は、私のためだ。
昔、実家のゴミ山から発掘した「早春スケッチブック」という、古~いドラマに、こんなセリフがあった。
“ なにかを好きになり、夢中になるというところまで行けるのは、素晴らしい能力なんだ。 ”
“ 物や人を深く愛せるというのは、誰もが持てるというものじゃない、大切な能力なんだ。努力しなければ持つことのできない能力なんだ ”
好きは、能力・・・。
「努力しなければ持つことのできない」というのは
好きがわかるまでお前はもがいたのかよ?ってことだ。
好きがわかるまでもがく。
何かを知って、深くまで愛するところまでいくには、多少の根気がいる。
「好きなことをやって生きていく」というのは
手応えのない不安な時間も、それを達成するためにやらなくちゃならない面倒臭いことも、全部含めての話なのだ。
それも含めて「わけわかんなくても良いから、何かつかんでやろう」を続けられた者にだけ、いつか何かが降り注ぐ。
やりたいことも、求められていることも、できることも、その全てが重なるちょうど良いポジションも。
本気でやってれば、体でわかる瞬間というのが、いつか必ず訪れる。
それを実体験をもとに教えてくれたのが、この還暦のシンデレラガールという一冊でございます。
どんぐりコロコロ。転がるように(*´-`)
いくつになっても迷っていい。
恥じずに、いっこいっこ探していい。