人生は続く。
「もう終わりだ・・・」と思っても、大抵の場合、本当の終わりはもっと後になってからくる。
会社をクビになろうが。
信じていた人に裏切られようが。
欲望を抑えきれず不祥事を起こしてしまおうが。
人生は続く。これからも結構続く。
神様はプレイヤーである我々に、何一つ初期設定の選択をたくすことなく、ある日突然この世界へと産み落とす。
んでもって「一時停止」も「あの面からやり直す」も一切許さない。
それどころかヘルプボタンからの問い合わせ窓口すら設けちゃいない。
そりゃぁもう・・・無口でスパルタな気質の持ち主なのでありますっ!(`・ω・´)
そんな世界をプレイしていると人は
ある日突然、基本設定すら全て無視して、行き先とは全く別の方向にむかって全力疾走したくなることがある。
うぉぉぉおおおお りゃぁぁぁああああああ!!!
村人Aとも、村人Bとも会いたくない!
ことあるごとにやたら心配してくる太った母も。
通りかかっただけで、なぜか武術を仕込もうとしてくる、あの上半身ハダカのじじぃも。
なんかもう、全部全部、会いたくないなぁー。
“ 何も聞かないで、何も言わないで、とにかく今は放っておいてほしい ”
そうゆう時期というのが、人にはあるのだ。
ある日とつぜん「タバコ買ってきまーす」と言ったまま、職場から失踪するところから物語が始まる。(完全実話)
何かを決意して・・・!というよりは、足が勝手にそのまま動く感じ。
パタパタパタパタ。
右足と、左足を、交互にパタパタ動かして、当てもなくただほっつき歩く。
どこか安心して眠れる場所を探して。
*******
11月。
しゃく、しゃく、しゃく、しゃく。
そこら辺で、誰かが育てていた大根を、勝手に引っこ抜いて、地べたでほうばった。
思ってたより、甘い・・!
大根ってのは、皮を厚くむくと甘口、薄くむくと辛口になる。
寝床?
寝床は、一応確保したよ。
最初はそこら辺に、ほっぽってあった穴だらけのシートを使ってたんだけど。
なんかあまりにも寒かったから、同じように外で生活してたホームレスのおっちゃんの家から、思い切ってかっぱらってきたんだ、この毛布。
いや、人としてあるまじき行為だってことは、もちろんわかってるよ。
でも、あん時はこうでもしないと生きていけなかったんだよ。
失踪・・・というとなんだか響きが悪いから
ここでは「漫画家としての取材旅行にきていた」って ことにしておきましょうか。
とにもかくにも、仕事して、帰宅して、酒飲んで、寝て、また仕事して・・・。
そんなルーティーンを送ってるうちに、僕は気づいたら限界になっていた。
でもどうゆう訳か、こういった生活になっても職場に戻るという選択肢は、湧いてこなかったんだ。
とはいえ、外の街を何ヶ月も風呂も入らず、ほっつき歩いているとね。
見るからに「不審な奴感」が出てくるんだよ。
そうなると警察にも目をつきやすくなる。
「ちょっとそこのあんた!」
やべ!と思った時にはもう遅かった。
「もしかして指名手配中のあれじゃないすかね?」
僕は、何かに間違われて警察署へと連れて行かれてしまった。
なんでこんな夜中にウロウロほっつき歩いてるんだ!
なんか・・・いっぱい聞かれた。笑
でも、そんなことより何より・・・このコーヒーの美味すぎだろ・・・。
出されたコーヒーが美味すぎるのなんのって。
******
このあとも筆者は「職場に戻っては失踪する」を、繰り返す。
そのたびに外での生活へと舞い戻るのだが、なぜだかいつもどこかのタイミングで、誰かしらが声をかけてくる。
「お前、仕事ないならうちで働くか?」
そんなことを言うと、どこの神だろう?と思うかもしれないが
こうやって気まぐれで仕事を紹介してきたおっさんも、実は中々のこじらせ者なのが、ものすごくリアルで、面白味のあるところである。
人生は続く。
どこまで落ちたって、たぶんこれからも続く。
だったら、どうせなら、最悪かもしれない今も「物語の一部としてとらえてみる」と言うのも、一つの生き方なのかもしれない。
ただしそれは映画やアニメのように、ものすごく綺麗な線でつながる下克上物語になるとは限らない。
現実はもっと、地味で、複雑で、上手く行かないことばかりだ。
でもそこに、ほんの少しのユーモアと、「誰かに楽しんでもらえたら良いな」と言う、遊び心をまぶしたのなら・・・
それはその瞬間「エンターテイメンント作品」へと姿を変える。
それがこの失踪日記なのである。
つらかったものを、つらかったもののまま世に出すのではなく、いったん寝かして、芸として差し出す。
その丁寧な姿勢こそが人の心に届き、事実を事実として伝えるよりももっと深く伝わってしまうから不思議である。
もしも今、人生のどん底にいるのなら、読んでみるとこれからのヒントになるかもしれない・・・そんな作品でございます(`・ω・´)